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アトピー性皮膚炎:デュピクセント®治療(注射薬)について~
■デュピクセント®について
当院では、中等症以上のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、デュピクセント®治療(注射薬)を行っています。(適応追加により・結節性痒疹(既存治療で効果不十分な成人の方)・特発性慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な12歳以上の方)に対してもデュピクセント治療を行っています。)
アトピー性皮膚炎では、「IL-4」と「IL-13」をはじめとするサイトカインという物質が皮膚の内側の炎症を引き起こし、皮膚のバリア機能やかゆみを誘発します。
デュピクセント®は、この「IL-4」と「IL-13」という炎症物質の働きをピンポイントで抑えることで、アトピー性皮膚炎の主な要因である「炎症」「かゆみ」「バリア機能」の3つすべてに作用が期待できるお薬です。
2018年に我が国でデュピクセント®が発売されてから、ここ数年でアトピー性皮膚炎の治療は大きく進歩してきました。アトピー性皮膚炎の治療がエビデンスに基づいてアップデートされ、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」として発表されました。
そのガイドラインの中で示されたポイントの一つ(改訂点)として、
これまでの治療で作用が不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、寛解導入・寛解維持の両方において、デュピルマブ(デュピクセント®)使用が推奨されています。(推奨度:1、エビデンスレベル:A)
■投与間隔について
デュピクセント®皮下注射の投与スケジュールは、2週間に1回のペースとなります。
■デュピクセント®の作用
実際、デュピクセントの投与を始めて早い段階から痒みが治まってくるのが特長で、すごく良くなったと言われる患者さんが多くいらっしゃいます。寛解導入時期の16週間投与した時点で、データ上では10人中7人で皮膚症状が1/4程度になることが期待できます(EASI75達成率68.9%)。副作用は結膜炎など軽微なものが多く、重篤な副作用はほとんどありません。
■前治療要件について(治療に適する方)
ただし、作用も高く、副作用も少ないため、長期に使用できるお薬なのですが、アトピー性皮膚炎患者さんであれば、どなたでも無条件に使えるか、といえばそうではありません。
投与できる患者さんは、特に「前治療要件」という下記の2つの要件を満たしていることが条件です。
ア)アトピー性皮膚炎ガイドラインで重症度に応じて推奨されるステロイド外用剤(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による症状に合った治療を直近の6ヶ月以上行っている。
イ)ステロイド外用剤やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所副作用若しくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難である。
つまり直近の6ヶ月以上、症状に合ったステロイド剤の外用を行っていてもコントロール不良な中等症~重症の患者さん、または副作用でこれ以上ステロイド外用剤が使えない患者さん、にのみ適応になります。(15歳以上)*2023年9月より生後6ヶ月以上に適応拡大
→初診の方
■当院をはじめて受診され、デュピクセント®治療を新規に始めたい方
診察させていただき「中等症以上」である(軽症ではない)ことはもちろんですが、直近の6ヶ月の治療内容がすべて確認できること、症状に合ったステロイド外用治療を行っていることが客観的に十分判断できること、が条件となります。(通院の間隔が長すぎる方、症状に合ったステロイド外用剤による治療を行っていない方など、適応にならない場合もあります。)
したがって、これまでの(特に直近の6ヶ月)アトピー性皮膚炎の治療内容がわかるように、お薬手帳をご持参ください。またアレルギー検査の結果もあれば、合わせてご持参ください。現在の皮膚症状を評価し、中等症~重症の方にデュピクセント®治療をご提案します。また皮膚症状によっては、血液検査でIgE(アレルギーの抗体価)やTARC(アトピー性皮膚炎の炎症のスコア)を測定する場合もあります。
お薬手帳がなく、直近の6ヶ月の治療内容もわからない場合は、当院でもデュピクセント®治療は行わず、まずは既存のステロイド外用剤などの、これまでと同様の治療を継続させていただきます。そのため現在通院されているクリニックでご相談された方が良いケースもありますので、何卒ご了承ください。
→転医の方
■他院でデュピクセント®治療を既に行っていて、当院でも継続したい方
他院でデュピクセント®治療を開始した時点でのEASIスコアなどの情報を、当院で診療報酬明細書に記載する必要があります。必ず、これまで通院していた皮膚科で診療情報提供書(紹介状)を書いてもらい、当院にご持参ください。EASIスコアが分からない場合は、当院でデュピクセント®治療を継続できないこともありますので、何卒ご了承ください。
■診療スケジュール
① | 初診時 |
問診:これまでの治療について確認します。(お薬手帳など) | |
診察:皮膚症状の確認をし、デュピクセント治療の可否を検討します。 | |
説明:デュピクセントについて説明します。パンフレットなど資料をお渡しします。(必要に応じて動画の視聴) | |
血液検査:必要に応じて、IgE(アレルギーの抗体価)やTARC(アトピー性皮膚炎の炎症スコア)の採血を行います。 | |
次回予約:デュピクセントを開始する場合、次回以降の来院日の選定(1回目、その2週間後の院内での自己注射日) | |
② | 2回目受診(初回注射日) |
診察:注射開始前の皮膚症状を写真に記録します。 | |
注射(2本):看護師から指導を受けていただき、一緒に注射していただきます。 | |
③ | 3回目受診(2回目注射日<2週間後>) |
診察:皮膚症状、副作用の有無の確認をします。 | |
注射(1本):看護師から指導を受けていただき、ご自身で注射していただきます。 | |
④ | 4回目受診(2週間後) |
診察:皮膚症状、副作用の有無の確認をし、問題なければ自宅での自己注射へ切り替えます。 | |
次回予約:次回の来院日を選定し、その分の注射薬(2本~6本)を処方します。 |
*診察にはお時間がかかりますので、時間に余裕を持ってご来院ください。初診の方はWeb予約<デュピクセントのご相談>またはお電話でご予約していだきますと、スムーズかと思います。ただし完全予約制ではございませんので、混雑している場合はお待ちいただくこともございますので(15~30分)ご理解いただきますようお願いいたします。
■費用について 2024年11月時点
デュピクセントの薬剤費:
初回(2本) 107,318円(3割負担で32,195円)
2回目以降(1本) 53,659円(3割負担で16,098円)
投与方法は2週間に1回の皮下注射で、4週間後の3回目からは薬局で注射薬を受け取って、自宅での自己注射が選択できます。
最初の2回は当院を受診して、注射・指導を受けていただく必要があります。
*その他に診察料、処方料、自己注射指導管理料650点(月1回)、導入初期加算料580点(月1回←最初の3ヶ月間のみ)などがかかります。
*窓口でのお支払いは現金のみになります。
ご収入にもよりますが、高額療養費制度が利用できますので、自己負担が軽減される可能性があります。高額療養費制度の内容、手続きについての詳細は、お手持ちの健康保険証に書かれている保険者(健康保険組合・協会けんぽなど<国民健康保険の場合は市区町村>)にご確認ください。
■デュピクセント®治療をいつまで継続するかについて
デュピクセント®を投与開始し、作用が得られた場合に、いつまで継続するのか?ということについては、現在のところ明確な基準はありません。アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでは、「寛解導入時期の16週間投与し、さらに6ヶ月を目安として寛解の維持が得られた場合には一時中止などを検討する。」となっています。したがって、最低でも投与開始から約1年くらいが目安になるかと思います。もちろん、その後も投与を継続することも可能ですので、その後の継続期間や投与間隔は、患者さんの皮膚症状を診ながら検討させていただいています。ただし、安易に一旦中止すると、中和抗体(お薬を中和する自己抗体)が体の中にできてしまい、アトピー性皮膚炎が悪化して再投与した場合に、前回ほど効かない可能性があります。
■今後のアトピー性皮膚炎の治療について
2018年のデュピクセント®発売以降、ここ数年でアトピー性皮膚炎の治療は大きく進歩してきました。2020年には内服JAK阻害薬が発売されるなど、今後もアトピー性皮膚炎の新規治療薬が登場する可能性は高く、その都度、現存する中で治療選択肢をアップデートしていきたいと考えています。現在、当院で行っているデュピクセント®治療は、クリニックでも提供できる大学病院や総合病院と同等の専門治療の1つです。デュピクセント®治療によって、より多くの患者さんが、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」を治療の最終目標(ゴール)に目指していきたいと思っています。
ご興味のある方は、一度ご相談ください。
■小児デュピクセント治療について
これまで15歳以上で適応であったデュピクセント注射治療薬が、2023年9月から生後6ヶ月以上の小児から使用できるようになりました。
小児の方は、体重によって投薬量・注射回数(投与間隔)が異なります。
体重60kg以上 300mgを2週間に1回
体重30kg~60kg未満 200mgを2週間に1回
体重15kg~30kg未満 300mgを4週間に1回
体重5kg~15kg未満 200mgを4週間に1回
お子さんの場合は自己注射が難しいため、2週に1回または4週に1回通院していただき注射になります。
大きな副作用は無く、現存する治療薬の中でもっとも作用が高く長期に使用できるお薬ですが、お子さんの注射にあたっては、痛みが伴うこと、また2週間(4週間)に1回の投与のため、心身的に負担になり長期的に継続することが適さない場合もあります。既存のステロイド外用薬で治療しても効果の乏しい、中等症以上のお子さんでお困りの方は、デュピクセント注射治療に適するかどうか診察させていただきますので、一度ご相談ください。