2024/12/19
皮膚科医をしていると、猫にまつわる皮膚病を診ることがあります。
飼い猫に噛まれた、引っかかれた。最近では流行りの猫カフェに行ってやられてしまうこともあります。ほとんどは軽症で抗生剤の外用などでよくなりますが、「猫ひっかき病」「バスツレラ感染症」というやっかいな皮膚病もあるので侮ってはいけません。また白癬は水虫やたむしを起こすカビ(白癬菌)でなりますが、猫からうつるミクロスポルム・カニスという白癬もあります。虫さされのひとつであるノミ刺症は、膝から下に多く、水ぶくれになることが特徴です。猫にかぎらず、動物と暮らす以上これらの皮膚病は避けて通れませんし、適切な処置をすれば重症化することもないので、決して怖がる必要はないと思います。
また、新しく家族として迎えいれたい、だけど、アレルギーがあるかもしれないので調べてもらいたい。そういうケースもあります。血液検査で「ネコノフケ」という項目があるので採血して調べることもできますが、陽性の場合だけでなく、陰性の場合でも、実際に猫と触れ合ってみて、くしゃみ、鼻水などの鼻炎症状、皮膚炎などが出現しないか確認することが大切です。
そんな猫ですが、いろんなことが起こって大変そうですが、愛猫との生活はかけがえのないものであり、家族の一員として大きな存在になることは言うまでもありません。
15年前、診療のお昼休みにたまプラ-ザの南口を歩いていたら、当時あった「ワンプラ」の前を通りがかりました。そこで一目惚れしてしまい、それ以来わが家にもアメリカンショートヘアのイーサンが家族の一員になりました。すぐに息子、娘のアイドルになり、当時幼かった彼らの成長にも計り知れない大きな影響を与えてくれました。
11月に日本皮膚科学会があり、TV出演や著作などでもご高名な順天堂大学の小林弘幸教授の自律神経についてのご講演がありました。先生は自律神経の第一人者でスポーツドクターでもあり、プロスポーツ選手のパフォーマンス向上にも関わっています。我が息子がスポーツ選手として活動しているため、何か役立つことがあればと思い拝聴しました。とても素晴らしく感銘をうける内容でしたので、自律神経についてもう少し勉強してみたいと後日書店に立ち寄りました。
すると、書棚の目立つところに小林先生のご著書がありました。なんと
『にゃんこと整える。』
小林先生も猫好きだったようです。求めていた著書とは異なりましたが、思わず購入してしまいました。内容はというと、猫がいかに副交感神経を優位にしてくれているかを、可愛い猫の写真56枚とともに医学的エビンスに基づいて解説しています。最近、さまざまな研究が進んで、猫が人間に与えてくれる健康効果が徐々に明らかになってきているそうです。たとえば、ごろごろと喉を鳴らす音。25~50ヘルツといわれる低周波の振動が人間の副交感神経を高め、心疾患のリスク低下や、血圧や呼吸のバランスを整えてくれること。また猫を触ることでオキシトシンというストレス緩和や気持ちを落ち着かせてくれる効果があるホルモンが分泌されるそうです。そして、このオキシトシンの分泌量は犬よりも猫を触るほうが多くなるそうです。などなど、猫好きの方にはとても興味深い内容です。
是非、年末年始のお休みに手に取って、愛猫を見て心を整えてみてください。オススメです。我が家のイーサンは、今まで以上に、私に頭をなでられ、おかしいなぁと思っているに違いありません。