2024/03/05
ラグビーワールドカップ2019年日本大会では、アンチ・ドーピングの普及・啓蒙活動の一環として「KEEP RUGBY CLEAN」キャンペーンが行われていました。
日頃、診療をしているとアスリートの患者さんを診察することもあります。けがや皮膚疾患、花粉症などでお薬を処方する場合、アスリートがドーピング違反にならないように注意する必要があります。
例えば、漢方薬としてよく処方される葛根湯には、原料に禁止物質の麻黄(エフェドリンの原料)を含むため違反になります。
皮膚疾患や花粉症などでよく使用することのあるプレドニンやセレスタミンは「糖質コルチコイド」を含むため禁止されています。
花粉症で処方されるディレグラ錠は「プソイドエフェドリン塩酸塩」を含むため禁止されています。
皮膚科医でも、これらの成分が入っているお薬をうっかり処方しないように注意しています。
最近では、一般名やジェネリックなど薬剤名もいろいろあるので、患者さんにとっては非常に分かりにくくなっています。
まずは医療者もアスリートの皆さんも、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の公式WEBサイトから、簡単に「薬の確認」ができますので、利用してみることをお勧めします。
WEBサイト内の検索システム(Grobal DRO←最新の禁止表にもとづいて、使用する薬に禁止物質が含まれるか否かの確認が可能な、世界的に運用されている検索エンジンです)に
1,競技名 2,購入国 3,薬剤名 を入力すると
「競技会(時)禁止」、「競技会外禁止されない」など検索結果が出ます。この場合は競技のときは服用できないけれど、普段は服用できるということです。逆に「常に禁止」という場合もあります。
ただアスリートが、①どの競技か ②どのレベルの選手か ③どの競技大会に出場かによっても禁止になるどうかは変わってきます。
日本アンチ・ドーピング規定において、「国内最高レベルの競技大会」に参加するアスリートは、<国内レベルアスリート>として定義されています。<国内レベルアスリート>は日本アンチ・ドーピング規定に従う必要があります。
例えばですが、ラグビーでの<2022年度国内最高レベルの競技大会>は
ラグビー・リーグワン、日本ラグビーフットボール選手権大会、太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2022、第77回国民体育大会でした。
スポーツにおいてすべての薬の使用が禁止されているわけではありませんが、禁止物質や禁止方法に当てはまらないものであれば、用法用量を守り使用することができます。アスリートの皆さんは体調が悪いとき、けがをしてしまったときに、服用するお薬が禁止物質でないか確認することができます。もし使用するお薬が禁止物質だった場合は、他剤に変更できないか、医師や薬剤師に相談してみてはいかがでしょう。
文献
- JADAホームページ
- 西川武志, 他:皮膚科医に必要なアンチ・ドーピングの知識, 臨皮75:148-150, 2021